「再起」から「再帰」へ

昨年の96敗から貯金9で堂々の2位フィニッシュでシーズンを終えたヤクルトスワローズ
10月の調子を考えても、CSファイナル進出は高確率だとそう思っていた。
しかし、神宮の魔物は容赦しなかった。
流れを巨人に全て持っていかれた挙句、菅野にノーヒットノーランを許してしまう。
テレビの前でただ失笑することしか出来なかった。

青木がいる。
それだけでチームはまとまった。
どんな逆境でも味方にし、盛り返す力があった。
ただ、本人の調子が悪くなると決まってチームも調子を落とした。
今回もそうだったのかもしれない。
よりにもよって、今年少なめだった怪我に泣かされてしまった。
ただ、こんなのは言い訳だ。
チームの総合力の低さが、露呈してしまったのだから。

川端や畠山といったベテランが、本来の力を発揮できなくなっている。
これがCS敗退の一つ目の要因だ。
怪我からの復帰に時間はかかることは分かっていたが、若手で有望株が次々と出てきているのが現状。
いくら功績者とはいえ、肩を叩かれるのも時間の問題だ。
松岡や山本も、自ら引退を選択した。
来年は生き残りのシーズンになるだろう。どうか若手の手本になるように、長く現役生活を続けて欲しい。

山田は史上初のトリプルスリー3度目を達成した。
しかし、ただ元通りに戻っただけだった。
これがCS敗退の二つ目の要因だ。
チャンスに弱いというのは致命的で、今季の試合を振り返っても、山田が活躍した試合で勝ち星はそこまで取れていない。
シーズン前、青木はこう言っていた。
「まだまだ山田は上へいけますよ」
この言葉は冗談ではなく本気だ。
3割30本30盗塁。誰もがやれる成績ではない。
しかし、自分は山田が加減せずにシーズンで活躍すれば、3割5分40本40盗塁ぐらいは達成できると考えている。
その時にはヤクルトが年俸を出せなくなる可能性があるが、正直そんな山田を一度見てみたい。
まだ一皮剥ける逸材が、来年更に飛躍するならば。
日本一だって夢物語ではない。

中継ぎや先発は今年大きく成長した。
しかし、まだまだ層は薄い。
これがCS敗退三つ目の要因だ。
先発の小川も原樹理も、内容としては一切悪くないものだった。
だが、イニングイーターとしての役割をまだ果たせていない。
どの球団を見ても、完投できる投手は必ず一人はいる。
そういう投手が中継ぎの負担を減らし、体力を温存させているのだ。
近藤が74登板を果たしている実情では優勝は不可能だ。
若手の中継ぎが多く出てきたが、まだエースとして任せられる投手はいない。
先発も同じだ。まだ不安定さが少しばかり残ってしまっている。
エースの定着。これが来年出来るのなら、チームは大きく前進するだろう。

ヤクルトの未来は思っているよりも明るい。
プロ初打席初ホームランを打った西浦、村上、廣岡。
アベレージヒッターとしての可能性を見せてくれた宮本、渡邉。
ミート力があり、尚且つ盗塁もできる塩見、山崎。
打てて守れる捕手になっている西田、古賀、松本。
中継ぎの希望となった中尾、風張、梅野。
将来エースを担える原樹理、高橋、大下。
少人数のチームながらも、それぞれが結果を出してきている。
名前を挙げなかった若手も、これから一軍で活躍する可能性が十分ある。

文字通り、今年は再起のシーズンだった。
では来年ヤクルトが目指すべきなのは?
私は「再帰」だと考えている。
もう一度、力をつけて神宮で再びCSを開催する。
今度は日本シリーズに進出するために。
燕はまた、セリーグに波乱を起こすだろう。